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日本語話者にとってのドイツ語は、どこが楽でどこが難しいのか

英語話者向けの解説は、日本語話者にとって半分は不要で、肝心なところが抜けています。母音も、文末の動詞も、助詞と格の対応も、あなたはすでに持っています。持っていないのは名詞の性です。

最終更新

German for Japanese speakers: what transfers and what does not

ドイツ語の入門書はたいてい英語話者向けに書かれています。だから「英語話者が驚くところ」に紙幅を使う。出発点が日本語だと、楽なところも難しいところも別の場所にあり、それを知っているだけで数か月ぶんの差がつきます。

思ったより楽なところ

発音。 ドイツ語の母音は日本語のそれに近く、英語と違って書いてあるとおりに読める。th もなければ、綴りから読みが定まらない a もありません。ほんとうに難しいのは短いリストで、r の音、ich の ch と ach の ch の区別、ウムラウト三つ。英語で捨てなければならないものの量にくらべれば、かなり小さい。

文末の動詞。 従属節では定動詞が文末に来ます。Ich weiß, dass er morgen kommt. 英語話者はここで混乱しますが、日本語話者にとっては当たり前の語順です。動詞で終わる節は謎ではなく、ふつうの文に見える。

複合語。 ドイツ語は名詞をどんどん連結します。Geschwindigkeitsbegrenzung は最初こそ威圧的ですが、要は三語がつながっているだけで、漢語の複合語を読み慣れた目にはむしろ解きやすい構造です。

敬意が文法に出ること。 du と Sie の使い分けがあり、選択には社会的な重みがあります。この発想そのものは馴染みがあり、日本語話者はここを雑に扱わない傾向があります。

誰も教えてくれない橋

ドイツ語の格は、英語話者にとって抽象的です。英語は名詞にほとんど印をつけないからです。日本語は助詞で、毎回、印をつけています。

  • 主語の「が」は、ドイツ語の1格(Nominativ)の仕事です。
  • 目的語の「を」は、4格(Akkusativ)。
  • 相手を示す「に」は、3格(Dativ)の大部分を覆います。

対応は完全ではありません。ドイツ語は名詞の後ろではなく前の冠詞に格を出しますし、「に」が引き受ける範囲はドイツ語では3格と複数の前置詞に分かれています。それでも、出発点のモデルとしては、英語話者が持っているもの(つまり何も無い)よりはるかにましです。Ich gebe dem Mann das Buch. は、日本語で書けば同じ三つの役割に同じ三つの印がつきます。

つまり日本語話者にとって格の難所は概念ではなく、表のほうです。4格 × 3性 × 単複を、冠詞の形で覚える。これは理解ではなく記憶の問題で、記憶には既知の解き方があります。

本当に難しいところ

名詞の性。 日本語に対応物がありません。すべての名詞が der / die / das のどれかで、意味からはほぼ予測できず、しかも上の格変化表は性がわからないと使えない。語尾からわかるパターンはあり、性の見分け方にまとめてありますが、相当部分は単語と一緒に覚えるしかありません。

複数形。 五つの型があり、ウムラウトがつくこともあり、確実には予測できない。答えは同じで、導き出すのではなく単語と一緒に持っておく。

そもそも冠詞があること。 日本語は冠詞なしで回ります。ドイツ語はほぼすべての名詞句に冠詞を要求し、そこに格まで載せる。二つの仕事を一語でやっていて、そのどちらも母語にはありません。

すでに知っている単語と、その罠

日本語は医学・登山・音楽・哲学の経路でドイツ語から大量に借りています。勉強を始める前から数百語の手持ちがあるということです。Arbeit、Karte、Thema、Energie、Allergie、Gaze、Hysterie、Rucksack、Gelände、Meister、Märchen、Baumkuchen、Bombe。

罠は、借用語が意味をずらすことです。「アルバイト」は非常勤の仕事ですが、Arbeit は常勤を含む労働一般。「カルテ」は Karte、つまりただの「カード」。「ゲレンデ」は Gelände、ドイツ語では単に「地形・敷地」です。

発音と形の先取りとしては優秀、意味の保証としては無効。読めるけれど確認は要る語、と位置づけるのが正しい。

で、何をするか

頻度順で覚える。最初の1000語がふつうの文章の大半を担っていて、そこから先は1語あたりの戻りが急に落ちます。名詞は 冠詞+名詞+複数形でひとつの項目にする。三つの事実に分けない。格変化表は一度読んで終わりにせず、復習の間隔に乗せる。語彙より速く抜けるのはこちらのほうです。そして単語は訳語ではなく文のなかで覚える。

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